観光庁では、将来にわたり国内外から旅行者を惹きつけ、継続的な来訪や消費額向上につながる地域・日本のレガシーとなる観光資源の形成を目的に、「将来にわたって旅行者を惹きつける地域・日本の新たなレガシー形成事業」を進められています。その一環として令和4年度に「北海道開拓・近代化・内陸運輸の原点、石炭が紡いだ「鉄道史と鉄道文化」の保護保全及び活用事業」が行われ、弊社で調査・分析等を担当いたしました。
舞台となった北海道三笠市には、北海道の近代化を支えた旧幌内鉄道に関する鉄道遺構が遺されており、動態保存しているSLを含め、観光資源としても活用されています。しかし年月の経過に伴い、車両の老朽化や技術スタッフの高齢化、部品調達の課題などが浮上しており、鉄道遺産を未来に継承していくための対策が急務です。
そこで、三笠市の現状を調査した上で、国内で鉄道遺産を抱える他地域の事例調査を行いました。三笠の鉄道遺産の中核となるSLと廃線跡を基軸としつつ、鉄道の観光利用の観点も加味して計6ヶ所を選定し、現地視察を行いました。
調査ではあえて、三笠と同じ廃線だけでなく営業中の鉄道路線も対象に含めましたが、様々な地域を調査してわかってきたのは、どこの地域でも同じ課題を抱えている、ということでした。当初は産業輸送を目的に開通した鉄道も、今では観光目的で利用されていることが多く、その鉄道や鉄道遺産を地域でどのように維持していくかといった課題に直面していることが、各地の鉄道に携わるスタッフとの意見交換などを通して見えてきました。